子宮内膜症の悪性化
症状
子宮内膜症は子宮内膜が子宮以外の場所で発育・増殖する病気で、月経のある女性の約10%にみられます。症状としては、月経痛、月経時以外の下腹痛、腰痛、性交痛および排便痛などがあります。不妊症との関連も指摘され、原因不明の不妊症患者の約50%に子宮内膜症が存在するといわれています。子宮内膜症が卵巣に発生すると、卵巣チョコレート嚢胞といわれる腫瘤をつくります。
診断
子宮内膜症は自覚症状、内診、画像診断(超音波検査、MRI検査など)、血液検査所見(腫瘍マーカー)を総合して診断します。腫瘍マーカーとは、腫瘍が存在することにより血中に増加する物質であり、子宮内膜症ではCA125という物質が上昇することがあります。本症の確定診断のためには、腹腔鏡などにより直視下に病変を確認することが必要となります。
子宮内膜症、特に卵巣チョコレート嚢胞を有する女性では、卵巣癌の発生する危険性が高いことが知られており、その頻度は0.7%とされています。したがって、卵巣チョコレート嚢胞の管理に際しては、卵巣癌の合併、共存の可能性を念頭におくことが重要となります。
治療
卵巣チョコレート嚢胞の経過観察中に、MRIや超音波検査などの画像診断で充実部の存在や腹水貯留など、悪性を示唆する所見がみられた時には直ちに外科的手術が必要となります。卵巣癌との合併は40歳代以後で高くなり、小さな腫瘤からも卵巣癌が発生することから、40歳以上の症例では原則として卵巣摘出が薦められます。卵巣チョコレート嚢胞は子宮筋腫とは異なり、閉経後に萎縮・消失することは少なく、むしろ癌の発生率は高くなります。40歳未満の症例でも、頻度は少ないものの卵巣癌を合併する症例が存在することから、卵巣チョコレート嚢胞の取り扱いには慎重な対応が望まれます。腫瘍径が5cmを超える症例や血中CA125濃度が高値を示す卵巣チョコレート嚢胞には嚢胞摘出術(腫瘤のみを摘出して正常卵巣部分を残す手術)を行い、術後も厳重な経過観察が必要です。